仕事で静岡に行ってきた。静岡で予定していた仕事もほぼ終わろうかというとき、関係者の計らいで富士通 沼津工場の「池田記念室」を見学することができた。池田記念室には、実動する世界最古のコンピュータと言われる 富士通 FACOM128B が展示されている。
FACOM128B は 1958年 (1959年だったかも) に作られたものだが、なんと今でも実際に動かして計算させることができるとのこと。今日はこの FACOM128B を実際に動かして、以下の計算をする。
n の2乗
n 分の1 を小数で表現したもの
ルート n
sin-n
cos-n
tan-n
n は 1 から50の値を取る。計算結果はプリンタに出力される。
記念室のお姉さんが操作台に何かを入力すると、FACOM128B はものすごい音を立てて動き出した。電源が入っていき、ファンのようなものが回る音が鳴る。そして計算が始まる。バチバチとけたたましい音がする。リレーが動作している音だそうだ。リレーの一つが1ビットを表現する。で、これが実際に機械的に稼働して計算するという仕組みだそうだ。
リレーが格納されたロッカーのさらに奥には、メモリとなるクロスバーが収められているロッカーがある。リレーとクロスバーの違いはよくわからないが、こちらも機械的に動いて情報を記録する。正確な数は覚えていないが、確かクロスバーの数は5000個という説明があった。つまり、5000ビットしかメモリがないということ。e-mail 一通のヘッダにも満たない容量だ。なのに、この大きさと質量。まさにこれは機械だ。
プリンタも、タイプライターみたいな活字がたくさん用意されていて、それを紙に直接打ち付けるタイプ。出力された紙には以下のように書かれていた。ちなみに、この黄色の出力用紙はお土産にもらってきた。
これだけだと見方がわからない。お姉さんが読み方を教えてくれた。
+1.0000000 +00 までが 1 の2乗の演算結果。後ろの +00 というのは、直前の数字の小数点を移動させる量を表している。+00 だったら小数点は移動せず、-01 だったら 小数点を左に一個ずらしたうえで直前の数字を読めば良い。
たとえば3行目の中央に +5.0000000 -01 という表記があるが、これは -01 が付いているので小数点を左に一個ずらすということだ。つまり、0.5 を意味している。2分の1 を小数で表した値だ。そのさらに右側には ルート2の演算結果がある。ルート2は「ひとよ ひとよに ひとみごろ」だが、出力は 1.4142136 +00 なので、四捨五入されているようだ。
で、出力用紙にはこれがずーっと続き、27 まであった。あのけたたましい演算を5分くらいやってたのに、到達したのは27まで。演算能力がボトルネックなのか、プリンタへの出力がボトルネックなのかはわからない。たぶん、どっちもぎりぎりまでチューニングされていて、ボトルネックというものが無いようになっているとは思う。FACOM128B の演算性能がどのくらいなのかはわからないが、今の電卓の方がよっぽどパワフルだろう。それでも、当時の FACOM128B は国産旅客機 YS-11 の尾翼設計や、光学レンズの設計などで活躍したそうだ。うーん、演算能力が凄まじく貴重な時代だったんだなあ。
FACOM128B のメンテナンスは今も続けられている。だからこそ何十年も経った現在でも実際に稼働する。お姉さんの話によると、メンテナンスをしている方はほとんどボランティアでやってくださっているそうだ。これだけ貴重な資料だし、なんとか実動する状態で保存したいという思いがあるのだろう。頭が下がる。
他にも池田記念室には「コアメモリー」をルーペで覗くことができる展示があったり、真空管があったり、パンチカードやその読み取り装置があったりと、見応えがあった。作った人たちの努力のと、それに敬意を払って維持していこうという人の思いに触れることができた。来て良かったと思う。
ちなみに、今回説明をしてくださった記念室のお姉さんは、本日は記念室への見学予定がなかったので普通の格好で勤務していたそうだ。しかし、私たちが訪問することになったので、急遽記念室用の制服に着替えて出迎えてくださったそうだ。わざわざありがとうございました。
案内してくださった方の話では、沼津工場では主にソフトウェアの開発をおこなっているとのこと。昔は汎用機を組み立てたりもしていたので、それを見学するコースもあったそうだ。現在はソフトウェアの開発が主になっているためか、工場内は静かでひっそりとした雰囲気だった。
今回は池田記念室の見学だけではなく、沼津工場の敷地内の一部を散策することもできた。沼津工場はとにかく自然が豊かなところで、記念樹らしき木々なども多数植えられていた。簡易的なゴルフコースまであった。また、静岡らしく茶畑があったのが面白かった。ここの茶畑で取れた富士通ブランドのお茶まであるそうな。
建物自体や内装は少々古さを感じさせるが、自然にあふれたいいところだった。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1110/gyokai76.htm
FACOM128B が演算している動画が見られる。画質と音質があまり良くないのが残念。
FUJITSUについて > 池田敏雄 > FUJITSU飛翔 - FUJITSU Japan
http://pr.fujitsu.com/jp/ikeda/hisyo1.html
- FACOM128B が実際に演算してるところを見学
案内してくださる方について行くと、普通のオフィスの中に、豪華な内装とショーケースがたくさん並んだ部屋が突然現れた。「池田記念室」だ。富士通の池田敏雄専務の業績の解説やゆかりの品を展示してある。記念室の一角には、なにやら灰色のオフィス用のロッカーのようなものが並んでいる。これがリレー式計算機 FACOM128B の筐体だ。日本大学で実際に使われていたものを引き取って展示しているそうだ。FACOM の名前の由来は、Fujitsu Automatic COMputer の略称からだと教えてもらった。FACOM128B は 1958年 (1959年だったかも) に作られたものだが、なんと今でも実際に動かして計算させることができるとのこと。今日はこの FACOM128B を実際に動かして、以下の計算をする。
n の2乗
n 分の1 を小数で表現したもの
ルート n
sin-n
cos-n
tan-n
n は 1 から50の値を取る。計算結果はプリンタに出力される。
記念室のお姉さんが操作台に何かを入力すると、FACOM128B はものすごい音を立てて動き出した。電源が入っていき、ファンのようなものが回る音が鳴る。そして計算が始まる。バチバチとけたたましい音がする。リレーが動作している音だそうだ。リレーの一つが1ビットを表現する。で、これが実際に機械的に稼働して計算するという仕組みだそうだ。
リレーが格納されたロッカーのさらに奥には、メモリとなるクロスバーが収められているロッカーがある。リレーとクロスバーの違いはよくわからないが、こちらも機械的に動いて情報を記録する。正確な数は覚えていないが、確かクロスバーの数は5000個という説明があった。つまり、5000ビットしかメモリがないということ。e-mail 一通のヘッダにも満たない容量だ。なのに、この大きさと質量。まさにこれは機械だ。
プリンタも、タイプライターみたいな活字がたくさん用意されていて、それを紙に直接打ち付けるタイプ。出力された紙には以下のように書かれていた。ちなみに、この黄色の出力用紙はお土産にもらってきた。
1 +1.0000000 +00 +1.0000000 +00 +1.0000000 +00
+1.7452406 -02 +9.9984769 -01 +1.7455065 -02
2 +4.0000000 +00 +5.0000000 -01 +1.4142136 +00
+3.4899497 -02 +9.9939083 -01 +3.4920770 -02
(以下、27まで続く)
これだけだと見方がわからない。お姉さんが読み方を教えてくれた。
+1.0000000 +00 までが 1 の2乗の演算結果。後ろの +00 というのは、直前の数字の小数点を移動させる量を表している。+00 だったら小数点は移動せず、-01 だったら 小数点を左に一個ずらしたうえで直前の数字を読めば良い。
たとえば3行目の中央に +5.0000000 -01 という表記があるが、これは -01 が付いているので小数点を左に一個ずらすということだ。つまり、0.5 を意味している。2分の1 を小数で表した値だ。そのさらに右側には ルート2の演算結果がある。ルート2は「ひとよ ひとよに ひとみごろ」だが、出力は 1.4142136 +00 なので、四捨五入されているようだ。
で、出力用紙にはこれがずーっと続き、27 まであった。あのけたたましい演算を5分くらいやってたのに、到達したのは27まで。演算能力がボトルネックなのか、プリンタへの出力がボトルネックなのかはわからない。たぶん、どっちもぎりぎりまでチューニングされていて、ボトルネックというものが無いようになっているとは思う。FACOM128B の演算性能がどのくらいなのかはわからないが、今の電卓の方がよっぽどパワフルだろう。それでも、当時の FACOM128B は国産旅客機 YS-11 の尾翼設計や、光学レンズの設計などで活躍したそうだ。うーん、演算能力が凄まじく貴重な時代だったんだなあ。
FACOM128B のメンテナンスは今も続けられている。だからこそ何十年も経った現在でも実際に稼働する。お姉さんの話によると、メンテナンスをしている方はほとんどボランティアでやってくださっているそうだ。これだけ貴重な資料だし、なんとか実動する状態で保存したいという思いがあるのだろう。頭が下がる。
他にも池田記念室には「コアメモリー」をルーペで覗くことができる展示があったり、真空管があったり、パンチカードやその読み取り装置があったりと、見応えがあった。作った人たちの努力のと、それに敬意を払って維持していこうという人の思いに触れることができた。来て良かったと思う。
ちなみに、今回説明をしてくださった記念室のお姉さんは、本日は記念室への見学予定がなかったので普通の格好で勤務していたそうだ。しかし、私たちが訪問することになったので、急遽記念室用の制服に着替えて出迎えてくださったそうだ。わざわざありがとうございました。
- 富士通 沼津工場
私は沼津工場を訪れるのは今回が初めて。とにかく広く、緑が豊か。正門から入っても、建物があるところまで数百メートルはある。まるで大学のキャンパスのようだった。案内してくださった方の話では、沼津工場では主にソフトウェアの開発をおこなっているとのこと。昔は汎用機を組み立てたりもしていたので、それを見学するコースもあったそうだ。現在はソフトウェアの開発が主になっているためか、工場内は静かでひっそりとした雰囲気だった。
今回は池田記念室の見学だけではなく、沼津工場の敷地内の一部を散策することもできた。沼津工場はとにかく自然が豊かなところで、記念樹らしき木々なども多数植えられていた。簡易的なゴルフコースまであった。また、静岡らしく茶畑があったのが面白かった。ここの茶畑で取れた富士通ブランドのお茶まであるそうな。
建物自体や内装は少々古さを感じさせるが、自然にあふれたいいところだった。
- 富士通 沼津工場 参考リンク
富士通コンピュータ事業の故郷、沼津工場見学記 〜リレー式コンピュータと農園が語る歴史http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1110/gyokai76.htm
FACOM128B が演算している動画が見られる。画質と音質があまり良くないのが残念。
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