「リンボウ先生の書斎のある暮らし―知のための空間・時間・道具」を読了した。読了まで1時間53分。2006-07-03 の「書斎を作る」の続き。
「リンボウ先生の書斎のある暮らし―知のための空間・時間・道具」は、著者である林望 (はやし のぞむ、愛称リンボウ) が、文筆業という立場から書斎を論じた本。単に書斎の作り方や使い方だけでなく、彼の考えるライフスタイルから書斎の意義について語っている。もともとは「書斎の造りかた」という書名だったが、文庫として収録されるにあたって改題したようだ。
この本の内容は多岐にわたる。書斎の定義から始まり、書斎の作り方と備品や什器の選び方、書斎での時間の過ごし方、文章の書き方、果ては書斎を通したライフスタイルから趣味の持ち方にまで及ぶ。
私は、自分の書斎をどう設計しようか、他の人たちはどんな書斎を持っていて、なにを重んじてそういう設計にしたのかを知りたくてこの本を手に取った。そんな私にとって有用だったのは、2章と5章。書斎の造り方の方法論が書いてあり、参考になる。とくに、固定観念にとらわれずに、自分がの用途と道具と環境に合わせて書斎の設計を考えるのが大切という姿勢は、大いに見習うべきものだ。
57ページ
5章の細かい方法論は参考になった。
「光は頭上の左後方から当てると本を読むときに反射が少なくて良い」とする照明の当て方。PC と本を同時に参照する場合はの書見台の活用。「機能重視のOAチェアが一番」と断言した椅子の選び方。一つ一つが著者の実体験から語られており、有用だった。私も書見台は10年くらい前から使っているが、かなり便利だ。
一方で、1章、3章、4章、6章、7章、8章、9章はちょっと趣向が異なる。後半の章で語られるライフスタイル論は筆者の知見を表していて面白い。しかし、前半の章にある「パソコンの使い方」や「文章の書き方」などは、本気で学びたいのなら他の本を読んだ方がいいだろう。著者の生き方や考え方のファンなら面白いと思うかもしれないが。
31ページ
確かにゲームというのは、限定されたルールのなかで遊ぶという状況が多い。しかし、限定と制約が絡み合ってゲームの面白さが作り出されるということを、著者は見落としている。
また、ゲームの面白さはジャンルによって千差万別だ。動物的で本能的な快感を刺激するゲームや、ゲームそのものよりもゲームを通したコミュニケーションを楽しむというものある。一概に「理解できない」とするのは乱暴すぎる。
さらに、著者は以下のようにも書いている。
32ページ
そして、「ダラダラとテレビを見るのはダメだが、能動的に見るテレビなら良い」としている。ダラダラするのはダメというのには納得できる。しかし、ゲームは能動的に楽しむのでさえダメ、何が面白いのか全く理解できない堕落した遊びであるというのは、あまりに狭量な意見だ。方法論は合理的だが、思考に柔軟性が感じられないのが残念だ。
- 「リンボウ先生の書斎のある暮らし」に書いてあったこと
「リンボウ先生の書斎のある暮らし―知のための空間・時間・道具」は、著者である林望 (はやし のぞむ、愛称リンボウ) が、文筆業という立場から書斎を論じた本。単に書斎の作り方や使い方だけでなく、彼の考えるライフスタイルから書斎の意義について語っている。もともとは「書斎の造りかた」という書名だったが、文庫として収録されるにあたって改題したようだ。
この本の内容は多岐にわたる。書斎の定義から始まり、書斎の作り方と備品や什器の選び方、書斎での時間の過ごし方、文章の書き方、果ては書斎を通したライフスタイルから趣味の持ち方にまで及ぶ。
私は、自分の書斎をどう設計しようか、他の人たちはどんな書斎を持っていて、なにを重んじてそういう設計にしたのかを知りたくてこの本を手に取った。そんな私にとって有用だったのは、2章と5章。書斎の造り方の方法論が書いてあり、参考になる。とくに、固定観念にとらわれずに、自分がの用途と道具と環境に合わせて書斎の設計を考えるのが大切という姿勢は、大いに見習うべきものだ。
57ページ
かくのごとく、何事も固定観念を覆して考えるということがすごく大切だということです。コンピュータだったら、コンピュータ専用の台が必要だとか、("蛍の光窓の雪"の時代と変わりなく) 机は窓のすぐ下に置いてとか、南に庭をとってとか、こういう固定観念は大禁物です。何がもっとも合理的かと考えていくこと、書斎を造る上でも、これがすごく大切なことなんですね。
5章の細かい方法論は参考になった。
「光は頭上の左後方から当てると本を読むときに反射が少なくて良い」とする照明の当て方。PC と本を同時に参照する場合はの書見台の活用。「機能重視のOAチェアが一番」と断言した椅子の選び方。一つ一つが著者の実体験から語られており、有用だった。私も書見台は10年くらい前から使っているが、かなり便利だ。
一方で、1章、3章、4章、6章、7章、8章、9章はちょっと趣向が異なる。後半の章で語られるライフスタイル論は筆者の知見を表していて面白い。しかし、前半の章にある「パソコンの使い方」や「文章の書き方」などは、本気で学びたいのなら他の本を読んだ方がいいだろう。著者の生き方や考え方のファンなら面白いと思うかもしれないが。
- 方法論は合理的だが、思考の柔軟性に欠ける
また、1章の「書斎の定義」での著者の視野の狭さが気になる。書斎は知的生産のためのもので、ゲームやテレビなどがある部屋は書斎の広い定義からも除外したいという趣旨の記述には賛同できない。考え方は人それぞれなので、ゲームやテレビ鑑賞の良さを理解したくなければそれはそれでいいが、私はこういう立場で書斎を定義したくはない。31ページ
同時に、テレビゲームをやるということも、私は書斎の営為としては除外して考えるのが筋だと思います。私は、なんでああいうものが面白いのか、まったく理解できません。ロールプレイングゲームなんて言ったって、しょせん人間が考えた一定のプログラムの上で遊んでいるだけであって、無限の可能性のある自然とは全然違うわけだから。
確かにゲームというのは、限定されたルールのなかで遊ぶという状況が多い。しかし、限定と制約が絡み合ってゲームの面白さが作り出されるということを、著者は見落としている。
また、ゲームの面白さはジャンルによって千差万別だ。動物的で本能的な快感を刺激するゲームや、ゲームそのものよりもゲームを通したコミュニケーションを楽しむというものある。一概に「理解できない」とするのは乱暴すぎる。
さらに、著者は以下のようにも書いている。
32ページ
むしろそういう俗世間の、通俗な堕落した遊びからは無縁でありたいと願う人のための橋頭堡が書斎だというふうに思っているので、書斎の中ではまずテレビというのは必要がない。
そして、「ダラダラとテレビを見るのはダメだが、能動的に見るテレビなら良い」としている。ダラダラするのはダメというのには納得できる。しかし、ゲームは能動的に楽しむのでさえダメ、何が面白いのか全く理解できない堕落した遊びであるというのは、あまりに狭量な意見だ。方法論は合理的だが、思考に柔軟性が感じられないのが残念だ。
- 人によって必要な書斎が違う
この本では、著者の考える領域の「知的生産」をする部屋を書斎としている。しかし、私が必要としている書斎は違う。偏狭な一部の領域に限ることなく、私の持っている音楽、ゲーム、本、映画、仕事、その他もろもろの学習や趣味を、効率的・機能的に楽しめる部屋、それが私が求める書斎だ。そういう書斎を作ることにしよう。- すべての記事の見出し (全1029件)
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- 斎藤 宏明。エンジニアです。宇都宮市に住んでいます。
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